Strange Attractor

この宇宙はさまざまな動的変化に満ちています。
これらの変化を分析するために多くの科学研究が生み出されてきました。 しかし、物理系、生物系いずれにおいても系の動態には予測の不可能なものがたくさんあります。
例えば、蛇口からしたたり落ちる水滴の間隔、心臓の鼓動、川の流れなど流体の動き、化学反応など。 株式取引などの経済システムでも無秩序で予測は不可能のように見えます。 数学でカオス理論が脚光を浴びはじめた背景には、これらの現象をうまく説明し、理解したいという 願いがあったのです。
数学的には、正確に法則に(決定論的に)したがう系でありながら、不規則なふるまいをするため 無秩序な動きをしているかにみえる系が扱われます。またこれらは、初めに与えられた条件(初期条件)に 大きく左右されるため長期的にはまったく予測が不可能なものです。
その例として、ローレンツ・モデルと呼ばれる大気の乱流モデルが有名です。
アメリカの気象学者エドワード・ローレンツはこのモデルを3次元空間に描画すると、蝶の形をした フラクタル構造になることを示しました。このモデルでは、ある範囲の初期条件からスタートすると、あるきまった 集合(アトラクタ)に吸い込まれます。しかし、このアトラクタ上での解の挙動が無秩序・不規則であり、 カオス的なのです。このようなアトラクタをストレインジ・アトラクタといいます。 ローレンツはこれにより、気象の長期予報は不可能であるということを証明しました。
気象学のほうでは「バタフライ効果」といって、ニューヨークで蝶がはばたくと世界の天気が変わるというくらい 「初期条件のわずかな差が、最終現象の大きな差を生み出す。(フランスの数学者ポワンカレ)」というカオスの特性 が認められています。

Lorenzモデルの微分方程式

dx/dt=a(y−x)

dy/dt=bx−y−xz

dz/dt=−cz+xy

ただし、a,b,cは定数。


この数値解を描画しました。矢印のボタンで視点を移動させられます。上下左右に視点を移して観察してみて下さい。 黄色の線は座標軸です。視点位置の目安にして下さい。
さらに微分方程式中の定数 a,b,c の値を変えてみて下さい。少しずつ違った形が描かれます。



MicrosoftのENCARTA97を参考にしました。また,Lorenzの微分方程式を紹介して下さった宇宙研の岸本女史に感謝します。